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執筆者の写真みずき書林

病気について

みずき書林/岡田林太郎に関わってくださる皆さまへ





先月の15日から31日まで、腸閉塞で入院していました。

開腹手術をして大腸を半分ばかり切除しましたが、おかげさまで手術は成功し、いまは退院して日常生活に戻っています。


ただ、その治療と検査の過程で、胃に癌が見つかりました。

スキルス胃癌という進行の早い厄介な癌で、それがすでに大腸に転移していました。つまり、ステージ4です。


ステージ4のスキルス胃癌は手術による根治はほぼ不可能で、今後は原則として、通院しながら抗がん剤での治療を行っていくことになります。


「○年後の生存率は○%」といった統計を信じるつもりはありませんし、具体的な数字をここに書きたい気もしません。

でも正直に書くと、あまり楽観できるシチュエーションではありません。


本日、築地の国立がん研究センターに行きました。

いうまでもなく、日本でも屈指のがん治療の専門施設のひとつであり、お医者さんも看護師さんも信頼感のある人たちでした。

シビアな状況ではありますが、おかげで今後の治療方針も見えてきましたので、今日はひとまず気持ち的に少し落ち着くことができました。


いまは、抗がん剤の副作用などはあるにしても、これまでとさほど変わらない暮らしを営みながら生きていけるようになっているということです。

ですから、可能な限り長く、みずき書林を続けていこうと思っています。

いまの目標は、数年先に「まだ生きてるじゃん。あのときの岡田さんって〈死ぬ死ぬ詐欺〉だったね」と笑われることです(笑)。


*


病気がわかって以来、このことを公表すべきか、いささか迷いました。

でも僕としては、この先の時間を分かち合う人たちには、知っていてほしいと願うようになりました。

先月、腸閉塞で入院していた頃(つまり僕自身も癌について知らなかった頃)、ほんとうにたくさんの励ましやお見舞いのメールをいただきました。ものすごく嬉しかったです。

そして退院した後も(つまり癌であることを知った後も)、退院を喜んでくださる方がたくさんいらっしゃいました。

「無事の退院おめでとう」と喜んでくださる方に対して、内心で「実は癌なんです……」と思いながら笑ってみせるのは、とてもしんどいことでした。

なんにせよ正直でありたいし、とくに大切に思い、また僕を大切に思ってくださる方には、素直な気持ちで付き合いたいと考えるようになりました。


もしかしたら僕は、親しい方々に打ち明けることで、自分の恐怖や不安を紛らわそうとしているだけなのかもしれません。

でもやはり、知り合って関係を結び、これからもその関係を続けていきたいと願っている人たちには、僕がいまどんなことを考え、これから先どういうふうに生きていくことになるのか、知っておいてほしいのです。


今後はこのブログも、仕事のことと並んで、病気のことを綴ることが多くなると思います。

入院中は、コロナの影響で、面会が一切禁止でした。そんななかでも、いただいたメールやSNSで、皆さんとつながっていることが実感できました。みずき書林はほんとうに恵まれた出版社だと感じられました。

今後もこのブログなどを通じて、僕が何を思っているかを綴り、皆さんとつながっていることを感じられればいいなあと願っています。


*


33歳の若さでがんで亡くなった保苅実は、死の直前に友人たちに宛てたメールで、以下のように書き残しています。

「勇敢で冷静、そして美しくありたいと感じています」

このことばがどこかに引っかかっていたのかもしれません。僕もステージ4の癌であることを知らされたときに、ともすれば取り乱しそうになる頭の片隅で、勇敢でありたいと考えました。

保苅実にならって僕なりのことばで言うと、いまは、

「勇敢に、丁寧に生きていたい」

と思っています。


*


このテキストを読んでくださっている方々には、これから先、個別に頼ったり、泣きついたり、愚痴ったり、号泣したり、取り乱したりするかもしれません。

何人かの人たちには、早速に様々なお願いを聞いていただいています。

出版というのは、常にある程度中長期的な視野を持つことが求められる仕事ですが、そのような展望を持つことが現実的に難しい計画については、見直さざるをえない場合もあると思います。

そのようなご相談を申し上げねばならない際には、ご理解を賜わりますよう、何卒お願い申し上げます。


もちろん、先ほども書いた通り、みずき書林は可能な限り続けていくつもりです。

何人もの会いたい顔が頭に浮かびます。

幾つもの作りたい本のことを考えます。

友人たちや、敬意を抱いている人たちがたくさんいます。

それは今までと変わらず、僕の光源であり続けます。


これから先、達成できることもあるでしょうし、やむを得ず諦めなければならないこともあるでしょう。

わがままを承知で申し上げますが、皆さまには、今までと変わらぬお付き合いをお願いできれば、本当に幸せです。


(ありきたりなクロージングのことばではなく、切実な願いを込めて)

今後ともどうかよろしくお願い申し上げます。



2021.9.9. みずき書林 岡田林太郎


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1 comentário


谷口 智子
谷口 智子
09 de set. de 2021

岡田さん、がんなんですね。私もです。私も8月に3週間、大腸癌の2回目の手術で直腸を切りました。今は一時的な人工肛門をつけて生活しています。切ることにとても抵抗していましたが、今は治療に切るか切らないかの選択権があるというのは、良かったことなのだな、と思っています。やはり同じように徹底的にスクリーニングして、自己免疫性肝炎も見つかりました(こちらは投薬治療でなんとかなるらしいです)。いずれにしても、今は二人に一人ががん患者の時代、ということですから、珍しいことではなくなっているのかもしれません。岐阜の船戸崇史先生の『がんが消えていく生き方  外科医ががん発症から13年たって初めて書ける克服法 』というのが参考になりました。彼自身もがんを患っていますが、今でもお元気です。スキルス性胃がんのステージ4というのは只事ではないですが、今を大事に、丁寧に生きていきましょう(お互いに)。『性愛と暴力の神話学』の編集作業、お疲れ様でした。

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