創業してから刊行した4点の書籍について、あらためて書いておこうと思います。
最初に刊行したのは、
小松健一さんの『民族曼陀羅 中國大陸』
奥付日は6月14日。小社の創業が4月13日だったので、ちょうど2カ月後に刊行したことになります。
創業して2カ月後に最初の本を刊行し、その後2カ月程度の間に続く3点を刊行したのは、ひとりで泥縄式にはじめたにしては、少なくはない数だと思います。そして当然ながら、それら4点に共通していえることですが、創業してから仕込んだわけではありません。いくらなんでも、研究書や学術書はそんなに早く出せるものではありません。いずれもけっこう前から準備していたものです。
細かい事情は割愛しますが、これら4点を小社で刊行することを了承してくれたことについては、編著者の方々をはじめ関係者の皆さんには感謝しかありません。
小松さんとは、3年前に広島と長崎の原爆の写真集を刊行して以来のお付き合いです。
毎度池袋界隈で会っては、「おもろ」や「みやらび」といった沖縄料理の店でよく飲みました。おもろは、とんでもなく年季の入った、池袋界隈でもそうとうな老舗店。なんというか馥郁たる昭和の香りというか、蓄積された脂と煙で店中が黒光りしているような店です。コップで酒を飲みながらソーミンチャンプルーなどをつついていると、店の(ちょっとばかり埃っぽい)空気ごと口にしているようで、なかなか味わいがあります。
おそらく池袋演芸場の帰りに寄っていたのでしょう、志ん生やら文楽やら伝説的な噺家たちの寄せ書きが壁で色褪せています。
みやらびでは、7月末に小松さんのお知り合いを中心に40人ほどが集まり、沖縄の舞踊を見ながら出版記念会を行いました。おかみさんやお店の方々もとても親切で良い方で、アットホームな雰囲気があります。海ぶどうの天ぷらはじめ、料理はどれも美味しい。
壁には一面に、大城立裕、山之口獏、立松和平といった、沖縄ゆかりの作家や詩人たちの色紙が並んでいます。
小松さんはカメラ片手に世界中を旅している方で、お目にかかるたびに、いつもどこか外国のお酒をお土産にくださいます。
中国の白酒やなんだかわからない茶色い酒など、とにかくやたらに度数の高いものばかりです。
中国の奥地のどこだかでとってきた岩塩の塊をいただいたこともありました。
そういうものどもを舐めながら写真集をめくっていると、小松さんが目にしてきた風景を香りと味付きで見ているようで、なかなか趣きがあります。
どうも小松さんについて書こうとすると、酒の話ばかりになるようです。
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