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執筆者の写真みずき書林

『タリナイ』年内最後の上映


横浜シネマリン。午前10時。

本日は映画『タリナイ』のシネマリンでの最終日でした。

つまり年内最後の上映でした。

いろいろ慌ただしい時期でしたが、見納めに劇場に行きました。


はじめて観たのは、去年の6月の自宅、小さなタブレットの画面でした。

そこから本作りを始めたわけですが、そのときは、映画が劇場公開されるかどうかはわかっていませんでした。

あれから1年半が経って、劇場の大きなスクリーンで観ることには、映画の直接の関係者ではない僕にとっても、ある種の感慨があります。


9月下旬にアップリンク渋谷で公開が始まった当初は、近くにあってこの先どうなるかわからなかったものが遠くに向かっていくという感慨でした。それから2カ月以上が経った今日は、遠くにあることには慣れたとして、その遠くにあるものを眺めていることに感興がありました。


実際、ここで描かれているものごとは、遠いのです。

マーシャル諸島共和国という国も、70年以上前の戦争の時代も、ウォッチェ環礁で餓死した日本兵のことも、物理的・時間的にはとても遠いはずです。

いうまでもなく、佐藤冨五郎さんのことを直接知っているわけではありません。


今日は、その遠さをあらためて感じたようでした。

この1年の本作りの経験によって、それらは僕にとってなにがなし近くに感じられるものになっていたはずでした。

とはいえ――いうまでもなく――映画を何度か観て、本を一冊作っただけで、その距離が容易に詰まるはずもありません。少しは近づけたでしょう。でも、隔たりのほうがなお深いのは確かです。そんなに簡単なことであるはずがないのです。

だからこそ、人はより近づこうとするのだろうし、僕の場合でいえば、歴史に関する次の本を作るというかたちで想像力を養い、少しでも距離を詰めようとしなければならないのでしょう。




なお年内最後とはいえ、年明け早々には大阪で、その次は名古屋でも上映が決まっています。

お近くの方はぜひご覧ください。



図書新聞。安田敏朗先生の今年下半期の3冊のなかに『マーシャル、父の戦場』を選んでいただきました。

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