自分と同い年のワインを飲む。
1978年、シャトー・レオヴィル・ポワフェレ。
これはもう酒ではなく、時間そのものを飲む感じ。
たとえば78年のワインは、これから先もう永遠に生まれることはない。
この年に作られたワインは、いま地球上にあるものがすべてで、それを飲んでしまったら、もう二度と手に入れることはできない。
時間をとり戻すことはできない。
たとえどんなに大金を積んだとしても。
高野寛に、
「この体の細胞 3年もたたないで 全部生まれ変わるなんて 不思議だね」
という詞がある。
このボトルは42年前、僕がおぎゃあと生まれたときに栓をされて、そのままずっと眠ってきた。
覆水盆に返らず、ということばがあるが、
コルクを抜いて、グラスに注いだ瞬間、何か取り返しのつかないことをしているような、時間の不可逆性そのものが赤い液体となって流れ落ちていくような感じがあった。
実際に高いか安いかではなく、そういうふうに時間を感じながら飲むことが、こういうお酒の面白さだろうと思う。
まあ、偉そうな感慨を連ねているが、マリアージュのお相手は、自分で揚げた鶏のから揚げだったんだが。
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