夕方、久しぶりに髪を切りに行く。
外は雨で、せっかく咲いた桜の花が雨に叩かれて散っていく。
5時頃に終了。さっぱりする。
以前だったらこの時間に恵比寿の駅前にいたら、スーパーで晩ごはんの買い物をしてから家に帰るところだ。
髪を切ってもらいながら、献立を考える。冷蔵庫のなかに何が残っていたっけ。お酒はあるんだっけ。そんなことも考えながら。
このまえから美味しいパスタが食べたかったんだった。
王道のカルボナーラなんかはどうだろう。だったらブロックベーコンがあればいい。卵と黒胡椒とニンニクとチーズは冷蔵庫にあったはず。
あとは野菜だけど、雨が降っていてちょっと肌寒いので、蒸し野菜にしよう。芽キャベツ、新じゃが、新玉ねぎを蒸籠で蒸す。梅干しがあったから、オリーブオイルやポン酢をつかって簡単なドレッシングを作ろう。
それとビールと白ワインをひと瓶。
そんなことを考えながら買い物を済ませて家に帰る。
6時30分くらいから料理にとりかかる。ビールをグラスに注いで、BGMは高野寛の傑作『Rainbow Magic』にしよう。
……そんなことをすることもなくなりました。
今日も髪を切りにいく直前に吐いたばかりです。
お腹が重たくて食事はまったく量を食べられなくて、料理をする気もなかなか起きませんん。まことに残念なことながら。
そんなふうに失われた習慣のことを考えると、呆然としてしまいます。
時代劇風に言うと、無念、ということばがぴったりです。
僕が禁じ手にしている用語でいうなら、未練です。
未練は悲しくてキリがないから、考えてはいけません。
でもそれでも、久しぶりに髪を切って、雨に濡れる桜並木を歩いている夕方などは、なくしてしまった楽しい時間のことを思い出して、悲しくなってしまうのです。
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